共生的窒素固定について

NPO法人 日本バイオ技術教育学会
理事長 小野寺 一清

これまでは窒素固定をする微生物(free living nitrogen fixing bacteria)について書いてきました。これ以上のニトロゲナーゼについて詳しい化学的研究は、専門学校の学生さんたちには難しいと思いますので、共生的窒素固定の研究について話題をかえます。

この問題こそ21世紀の生物窒素固定研究の行くべき方向だというのが、私が宮崎の国際会結論でした。私が研究をした1962-1967年の我国はまだ戦後の名残が感じられるような時代でした。しかしアメリカのDu Pont社で行われたクロストリジウムのニトロゲナーゼの研究の成果は伝わってきました。生化学的な研究は到底太刀打ちが出来ないと思いいろいろ考え、マメ科植物の窒素固定の研究を夏は大豆、冬はルーピンの根瘤を材料として、生理学的な研究に絞ってN15を使い窒素固定を直接測定しました。夏は群馬県、千葉県のお百姓さんの大豆畑を訪ね、持参した液体窒素の入れ物に根瘤を入れてもらい枝豆の代金を支払いました。冬は新島を訪れて、緑肥として使われていたルーピンで同じことをお願いしました。この場合代金は払いませんでした。夜10時に竹芝桟橋から汽船に乗り、翌朝新島に着き天候が良ければその日のうちに下田に戻り、帰京し夜中実験をしました。天候に恵まれないときは新島で船を待つというスケジュ―ルでした。

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一人で結構楽しんで実験をしたことを懐かしく思い出します。冬は波が高く船旅は結構スリル満点です。あるとき海があれて汽船が来ないので、妊婦と一緒にヘリコプターで下田まで運んでもらったこともあります。遊んでいるような気分ですが、実験室に帰ると真面目に窒素固定の測定に取り組みました。

さて昔話はこれくらいにして本題に入りましょう。

共生的という素敵な言葉ですが、内実は一口で説明できるものではない。現在のところ微生物しか窒素固定は出来ないのです。真核細胞の植物は炭酸ガス固定が出来ますので太陽エネルギーを利用して生きているといえます。しかし窒素を固定することは出来ません。植物と窒素固定菌の共同作業により植物の細胞、特に根の細胞の中に入り込み、バクテリアは植物の根の細胞の中に入り分化したバクテロイドと言われる細胞に分化することによって、この共同体は炭酸ガス固定と窒素固定との相互作用により、効率よくともに繁栄するとことを意味しているのです。種々の組み合わせがありますがここではマメ科植物とheterocystous cyanobacteriaに絞って話します。土壌細菌の根粒菌はまずマメ科植物の根毛先端部に侵入する。次に、生理活性物の作用により感染、侵入部位で細胞分裂、組織肥大が生じ、その結果として根粒バクテロイドが形成される。さらに、レグヘモグロビンが生合成されることにより、根粒バクテロイドの酸素供給が制御され、ここで窒素固定酵素系が機能するようになる。レグヘモグロビン形成機能を持つ根粒を有効根粒といい、無いものを無効根粒という。このように我々の想像を超えた複雑な機構が考えられる。また植物は水を分解して酸素を生産するという重要な機能を持つので、ニトロゲナーゼは極度に酸素に弱いので、共生系はこのことに配慮する必要がある。

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